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Lottie

アスリートとエモーショナル・イーティング



アメリカのスポーツ心理学の教科書に、“eating disorder” と “disordered eating”という言葉が出てきます。アメリカでは2つは異なる意味で使用しています。 


この違いについて、「エモーショナル・イーティングのサイン、行動パターン」のお話で説明しました。


あれから3年が立ちましたが、アスリートの摂食障害についてのニュースは少しは目にするようにはなりましたが、エモーショナル・イーティングについてはほとんど語られていません。


そこで、あるトレーナーに「エモーショナル・イーティングは知っていますか?」と尋ねたところ、「聞いたことはない」と答えました。そして、エモーショナル・イーティングについて説明すると、「あ!摂食障害ね。それは、難しい問題。『ちゃんと食べてる?』と聞いていいのかわからないし、アスリートのメンタルの問題は非常に繊細なので誰もが扱いずらいと感じていると思うよ。本人に聞くのも難しいしね。イメージとしては『女性アスリートが抱える問題』かな。特に『体重制限のある競技』、『見た目も評価される競技』。後は、女子のマラソンランナーかな?体脂肪を気にしている選手が多いいから」と話してくれました。


アスリートにとって「食事」は、「パフォーマンス向上の他、怪我や病気のリスクを軽減するために重要だ」と誰もがわかっていても、食との関係性に悩んでいるアスリートについて多くは語られません。


その背景には、(1)誰がその問題に介入すべきか?(2)アスリートにどうやって話したらいいのか?(3)アスリートの食事行動の問題をサポート体制が不十分といったことがあるからだそうです。(”Support for athletes with eating psychopathology symptoms: exploring the views of athletes, coaches and sport practitioners” Journal of Applied Sport Psychology volume 35 No 2. March-April 2023)


アメリカがこのような現状であれば、日本でアスリートの食事行動の問題について多く語られないのもおかしくはないですよね。


エモーショナル・イーティングに悩んでいる人の多くは、「意思が弱い」と思っている人がいます。そして、アスリートはメンタルが強いからエモーショナル・イーティングにはならないのでは?という人もいます。


しかし、メンタルタフネスとエモーショナル・イーティングの関係性を調査した文献に、ナショナルチームに選ばれた選手のほうが、ナショナルチームに選ばれていない選手より、エモーショナル・イーティングをする傾向にあるという報告があります。("The relationship of mental toughness and emotional eating: the example of a female wrester Asian Journal of Education and Training" Vol.8 No.4 114-120. 2022) その文献は、スポーツ栄養学の知識が少ない選手ほど間違った食べ方をしてしまい、その結果エモーショナル・イーティングになってしまうのでは?とあり、そのあたりを更に調査する必要があると書いてありました。


トップアスリートの多くは、アスリートとしてのキャリアを子供のころから始めます。その頃から、厳格な食事制限を始める選手もいます。子供のころからの厳格な食事制限は、食の渇望、空腹でなくても直観的に食べてしまうといった、健康的でな食べ方(disordered eating)につながり、栄養価が低くカロリーの高い食べ物を選択してしまうという結果を招く可能性もあるという報告もあります。


また、アスリートのエモーショナル・イーティングは、年齢に関係なく、極端な食事管理をするアスリートに見られる傾向にある。例えば、シーズン中は極端な食事制限をし、オフシーズンに我慢していたものを食べるという食事行動。もう1つは、アスリートがきつい感情体験したりするとエモーショナル・イーティングをする。よって、現役中は、感情が引き金になり食の渇望をする可能性はあり、食べ物で感情をコントロールできるとなると都合がいいと考えるトップアスリートもいるという報告もあります。

(Emotional eating Implications for Research and Practice in Elite Sports Contex Tracy J. Devonport, Wendy Nicholls, and Chao-Haw Chewn-Wilson : Feelings in Sport 2021)


アスリートも一人の人間。エモーショナル・イーティングを放置すると摂食障害に発展する可能性もありますし、他の病気に発展する可能性もあります。


エモーショナル・イーティングは、「助けて!」という体からのメッセージだと思っています。もっと、多くの人に「エモーショナル・イーティング」について知ってもらいたい、そして、アスリートもエモーショナル・イーティングになるということを知ってもらいたいと思います。




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