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Lottie

Athlete Wellness® 数字ではなく、健康とパフォーマンス!

ACSMは先日女性アスリートの健康問題について興味深い記事(Sports Science is Changing How Female Olympians Train. It could help you, too Olympic Heptathlon Star Annie Kunz Says Sports Science Helped Boost Performance : Shots - Health News : NPR) (以下「本記事」といいます)を紹介しました。本記事は2021年8月3日付けの記事です。


本記事のポイントは3つ。

(1) 結果を出す為にはウエルネスを犠牲にしないこと

(2) 「体が細いと早く走れる、体重が軽い方がよい」は誤解を生じる

(3) 健康のバロメーターは生理(周期、量等を含む)


私見と一緒に簡単にご紹介したいと思います。


女性アスリートの健康問題として、無月経、骨粗鬆症、摂食問題(disordered eating)※がよく挙げられています。この10年で色々変わってきているものの、女性アスリートを対象にスポーツ科学の視点での研究があまりされてこなかったことから、男性アスリートのデータが一般化され用いられてきました。その結果、生理周期やピルがトレーニングやパフォーマンスについてどのような影響があるのか?についての情報はあまりなかったのも現実です。


多くのアスリートや指導者は、「パフォーマンス向上=特定の体型・ボディーイメージ」と考える傾向にあることから、相対的エネルギー不足(Relative Energy Deficiency in Sports (RED-S)になってしまうアスリートは少なくはありません。持久系の男性アスリートの体脂肪率を参考に「細いほうが早い」と女性アスリートを指導をしても同じような結果は出ないと本記事は指摘しています。しかし、特定の体型・ボディーイメージのプレッシャーから一般的に女性アスリートがRED-Sになりやすいのですが、男性アスリートもRED-Sになります。RED-Sは、パフォーマンス低下のみならず様々な健康上の問題も引き起こすことからこの問題は軽視できないと本記事は指摘しています。


問題は、多くの女性アスリートがこの問題について知らないこと。知っていても、RED-Sを治療することができる医師に相談をしないこと。RED-Sの問題を抱えているアスリートに対して、「ちゃんとご飯を食べるように」と言っても効果的ではなく、摂食障害の問題は抱えていなくとも、摂食問題を抱えている場合が多いいことから、メンタルの問題を考慮しながらのコミュニケーションをとる必要があり、RED-Sを治療している医師でも適切なコミュニケーションをとることができる医師は少なくはないと本記事は更に指摘をしています。


生理は健康のバロメーター。


女性なら誰しもが「生理はない方が楽」と感じると思います。そして、PMSや生理痛を不快に感じない人はいないと思います。女性アスリートは、生理だからといって試合に出ないという選択肢は無く、生理痛が酷いからといってトレーニングを休むこともできないことと思います。


あるオリンピアンから「必ずコーチはピルを飲むようにと言うけど、薬に頼らないでPMSや生理痛を軽減できる方法はあるのか?」と相談されたこともあります。


皆さんはどう思いますか?


個人的には、ピルや痛み止めの薬はホルモンバランスや腸内環境を崩すので、体のことを考えるとあまりお勧めはできませんが、医師が適切に判断をして処方をする場合は、医師の指示に従うことが望ましいと思います。しかし、食事、リカバリー、生活環境を見直すことでPMSや生理痛は軽減することができると科学的にもわかっています。したがって、健康上の問題がないのであれば、先ずは食事、リカバリー、生活環境を見直すところから始めるのがよいと思います。


具体的には、生理の周期、出血量や生理痛は個人差があります。よって、自分の体の状態を把握する為に基礎体温や生理の周期等を記録することから始めます。次にリカバリーの視点から抗酸化作用が期待できるファイトケミカルが多く含まれるフルーツや野菜を積極的に摂り、腸内環境やホルモンバランスの視点から食事と睡眠時間の見直しも重要になります。また動物性・乳製品はPMSや生理痛との関係性があるという研究報告もあることから、植物性食に変更することも選択肢の1つです。(ただし、完全に植物性食に変更をする場合は、カロリー不足とビタミンD B12不足に注意が必要です)甘い物を渇望する場合は、少量のダークチョコレートを食べる方法もありますが、渇望の原因はホルモンバランスの問題、メンタルフィットネスの問題、食べ物の選択の問題が複雑に絡み合っていることから、渇望の根本原因を解決しない限り渇望は止みません。水分不足にも注意が必要です。このように、アスリート自らやれることは沢山あると思いますし、指導者の方もアスリートの健康を考えて薬に頼るのではなく、先ずは食事、リカバリー、生活環境の見直しを勧めることが大切だと思います。


本記事は、「アスリートは健康を維持し、怪我をしないことに注意する必要がある。それには、アスリートのウエルネスに重点をおいて、トレーニングの負荷、トレーニング全体のフェーズ、そして、気分的にも良好であるように適切な管理をすること。要は、数字ではなく、健康とパフォーマンス!」とアスリートウエルネスの向上の重要性を謳っています。


つまり、結果を出す為にウエルネスを犠牲にする必要はあるのか?ウエルネスを犠牲にして結果を出せたとしても、その代償は? 例えば、スポーツ依存や摂食障害等の問題は現役を終えてもその問題は終わらず、長期にわたって選手とその家族を苦しめることになります。(スポーツ依存や摂食障害に関するblogはこちら


勿論、結果を出す為には多くのことを犠牲にして努力をする必要はあると思いますが、個人的にはウエルネスを犠牲にしてまで結果を出すことに疑問を感じます。むしろ、アスリートウエルネスの向上こそが、その選手が持っている潜在的能力引き出すドライバーだと思っています。そして、アスリートと指導者は、アスリートウエルネスのトライアングルを理解することが大切だと思います。つまり、技術やフィジカルフィットネスのみを磨いても、最高のパフォーマンスはできず、メンタルフィットネス、ニュートリション、マインドセット、リカバリーの基盤が強固であればあるほど、技術・フィジカルフィットネスの向上は可能であり潜在的能力を引き出すことができる、これが心技体のバランスだと思います。


※ここで言う摂食問題とは、摂食障害とは異なります。アメリカでは摂食障害eating disorderedと摂食問題disordered eatingとは分けていて、整理しますが、日本語では両方「摂食障害」として訳されます。違いは、違いは、American Psychiatric Association (アメリカ精神医学会)が定義する診断基準と一致する状態か否か?です。つり、Eating Disorderは、摂食障害としてアメリカ精神医学会が定義する診断基準があり、その基準で診断されます。その代表的なものが、神経性無食欲症、神経性大食症や、むちゃぐい障害です。一方、Disordered Eatingは、必ずしも摂食障害として診断されるものではなく、広義の意味で、食べ方のパターンが健全ではない行動(感情食い・ストレス食い等)を指します。EDNOSのように、過食症や拒食症とも特定できない「不特定の摂食障害」とも異なります。



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